横山秀夫が帰ってきた

横山秀夫の7年ぶりの新刊『64』、647ページ一気読みだった。体調を崩して、書けなかったのだと聞く。復帰作を一言でいえば、健在だ。

64

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横山はD県警シリーズはじめ、警察小説の騎手として世に出た。地方紙の記者をしていたからこその、警察官や事件記者の表情、内面のディテール。警務を主人公にした小説なんて、この人にしか書き得なかった世界だろう。

その後、執筆のフィールドを広げていたが、この64は原点回帰と言える。主人公は県警本部の広報官。刑事、警務そして、マスコミの近くて遠い関係を、実に丁寧に描く。まさに渾身。初期の、全く新しい警察小説を描き出したあのころの衝撃を思い出させる。

きっとこれから読む人が多いから、内容には触れない。横山の小説の中では、かなり長尺だ。前半は、刑事と警務、広報とマスコミ−対立と葛藤がじっくりと進んでいく。それだけに展開には乏しいかも知れない。だがそれは、300ページを超えたあたりからのスピード感のための、長く豊かな伏線になっている。エンタメ小説としても、完成度は極めて高い。

そして全編に、横山の地方警察へ、地方記者への愛情があふれている。
横山秀夫が帰ってきた。